第16章~不安

俺はギターケース片手に唯の家に向かった。

別に行く事で何か変わる訳じゃないが、少し話したりすると気晴らしにもなるだろ。

まぁ俺で気晴らしになるかどうかは不明だが。

そんな事を考えていたら後ろから俺を呼ぶ声がした。

舞『健にぃ~!』

後ろを振り向いたら唯の妹の舞が立っていた。

手には大きな買い物袋を下げている。

舞は唯の一つ下だが、かなりの童顔。唯と並んでいると3~4歳ほど離れて見える。

まぁ小さい頃は一緒に遊んだりしてたし、俺にとっては血の繋がってない妹みたいなもんだ。

舞『健にぃ久しぶりじゃん♪こんな遅くまで学校だったの?高校生って大変だねぇ。』

舞は無邪気な笑顔を俺にむけた。

健三『いや、俺も部活始めてなぁ。つか唯と同じとこなんだけど聞いてなかった?』

舞は、ん~と苦笑いしながら

舞『最近お姉ちゃんとまともに話してないんだよね。』

俺は驚いて舞に聞いた。

健三『喧嘩でもしたのか?』

舞は小さく首を振った

舞『舞、お姉ちゃんと喧嘩なんかしないよ。大好きだもん。ご飯とかお洗濯とかなんでもやってくれるんだもん。たまに舞もお手伝いするんだけど、迷惑ばっかかけちゃって…。だからせめて少しでもお姉ちゃんの役に立ちたくてお買い物いってたの。舞って要領悪いから…。舞の事嫌いになっちゃったのかなぁ。』

俺は舞の頭を撫でながら、

健三『そんな事ないよ。唯なんか前に、舞の為にご飯作ってあげなきゃって急いで帰ってたし、絶対に舞の事大事に思ってるよ』

唯は頬を赤らめながら、

唯『そっかなぁ?でも健にぃがそう言うならそうなんだよね♪やっぱり健にぃ優しいな。健にぃもお姉ちゃんと一緒ぐらい大好き♪』

そういうと俺の腕に抱きついて来た。

舞は俺にひっつきながら、

舞『そうだ!今から舞のお家で一緒にご飯食べようよ!お姉ちゃん風邪引いてるから今日は舞がご飯作るの♪』

舞は勝手にはしゃぎだした。俺はやれやれと笑った後、

健三『まぁ、唯の見舞いついでに舞の飯もご馳走になろうかな。』

舞は下を向いてボソッっと何か言っていた。

舞『・・・か。』

それはあまりにもか細く、今にも消え入る声だった為、俺は『か』しか聞きとれなかった。

健三『今なんかいった?』

舞は一瞬驚いた表情をしたが直ぐに笑顔に戻した。

舞『え…あ。なんでもないよ♪じゃあ一緒にいこ♪』

と、濁されてしまった。

しかし、唯の奴風邪ひいてたのか。こりゃリアル見舞いになりそうだな。

俺は舞の横に並びながら唯のもとに向かった。




第17章~愛憎

しばらくすると唯の家に着いた。車庫が空っぽになっている。まだお袋さんは帰ってきてないようだった。

健三『お袋さんいつもこんぐらい遅いのか?』

舞がうなずく。

舞『これよりまだ全然遅いよ。最近は夜中とかに帰ってくることもあるし。』

俺はあまり他人の家庭に首突っ込むのもアレなので、そうか。といって話を終わらせた。

舞『じゃーあがってあがって♪健にぃがうちに来るなんて何年ぶりだろ♪』

そういうと舞は扉を開け中にスタスタ入って行った。

俺も中に入ろうとしたとき、後ろから誰かに見られる凄い嫌な感じがした。

背中にナイフ突き立てられるという表現が一番正しいと思う。俺は意を決して後ろを振り返りあたりを見回した。が、誰もいない。俺の勘違いだったのだろうか・・・。

そんな俺を見て舞は

舞『健にぃ?大丈夫?』

俺は脂汗を拭いながら大丈夫と答えた。さっきの視線は一体なんだったのだろう。

俺は舞に手を引っ張られて家に招待された。

俺はあがるや否や、速攻キッチンに強制連行される。舞は照れくさそうに

舞『実は舞ね、お料理したことないの。でもお姉ちゃんにおかゆ作ってあげたくて!健にぃ一緒に手伝ってくれる??』

家にあがっといて嫌だとは言えないだろ。と思いつつ、俺は快く承諾した。

俺は手際良く料理の支度を始める。こう見えても料理はやるほうだ。小腹が空いたときなんかよく家であまり物を駆使して作ったりしている。

舞に火を扱わせるのはちょっと危険かな。と思いまず卵を割ってもらう事にした。

健三『舞~。そこの卵2個割っといて。』

うん!と威勢の良い声が聞こえた刹那、メキャっと言う音と共に悲鳴が聞こえた。

振り返ってみると卵まみれの舞の姿があった。何で卵かぶってんだコイツは・・・。

舞『健にぃ~。卵を頭で割ろうとしたら割れちゃったよぉ・・。』

これは新しい萌えの領域なのだろうか。卵割り萌え。んなわきゃない。

健三『とりあえず、卵でベタベタになっちゃうから風呂はいってきな?あと台拭きみたいなのあったらついでに持ってきてくれ。』

舞はあう~と唸りながら風呂場に直行した。後で舞に卵の割り方でも教えてやるか・・・。

俺はその間に万ネギを切り、御飯を1度水でサッと洗い、土鍋に移し昆布ダシを注いだ。

冷蔵庫を漁ったら三つ葉があったので色飾りに三つ葉を乗せてみるか。とか思ってると舞が帰ってきた。

舞『ふぅ~さっぱりした~♪健にぃごめんねぇ。手間かけさせちゃって。』

髪の毛が濡れて少し色っぽい。俺は不覚にも少しドキっとしてしまった。

健三『そ。そうだ!卵の割り方を教えてあげなきゃな。ちょっとこっちおいで。』

そういうと舞はピョコピョコ寄ってきた。

健三『卵を割る時絶対しちゃいけないのが机の角とか頭とかだからな。』

俺は笑いながら舞を撫でた。舞も照れくさそうに笑っている。

健三『卵って言うのはな、卵と卵をぶつけさせるのが正しいんだよ。』

舞はびっくりした様子で、

舞『えええ!そしたら二つ割れちゃうじゃん!!』

俺は予想通りのリアクションでちょっと嬉しかった。

健三『まぁ見ててごらん。』

と実践して見せてあげた。

俺は卵と卵をぶつける。その衝撃で割れたのは片方のみだった。

舞『ええ?!なんでぇ?!不思議!!!なんでなんで??』

なんでと言われても調べた事がなかったから分からない俺。とりあえず親に聞いた事にしておいた。

健三『こうすると片方にヒビが良い具合に入る。そんでもってもう一個の卵は平らなところで優しく卵を割るんだよ。』

舞は目を輝かせて

舞『やっぱ健にぃはなんでも知ってるんだねぇ!!かっこいいなぁ♪』

ここまで誉められると悪い気はしない。卵も割った事だし仕上げに入るとしよう。

沸騰した土鍋の中に溶き卵を円を書くように流し込み、弱火でじっくりコトコト煮込めば卵粥の完成だ。

飾りつけにミツバも加えて完成!

舞はおおお♪と拍手してくれた。俺は照れ笑いを浮かべている。

その時、扉の向こうで人影があったのに俺は気づいていなかった。




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第14章~直感


向こうの方で俺の事を待ってる奴がいる。・・・・唯だ。俺はおおきく手を振りながら唯を呼んだ。


健三『おーい唯~。』


唯は酷く冷たい目で俺の目を睨んだ。


唯『私、雄太君と付き合う事にしたの。サヨナラ。もう気安く私に話しかけないでね。』


横から雄太が出てきて俺の事を見下す。


雄太『そういう事だ。あばよ。マエケン』


健三『ふ・・・ふざけんなああああああ!!!!!!!!!!!!』








俺は頭を小突かれ、布団を引き剥がされた。そこには鬼の形相の母親がたっていた。


母『ふざけんじゃないのはあんたの方よ!!今何時だと思ってるの!!さっさと学校行かないと遅刻するわよ!!』


俺は寝ぼけながら目覚まし時計を手に取る。


健三『げ!!7時?!』


1時間の遅刻である。俺は慌てて制服に着替え、速攻で飛び出した。


俺は猛ダッシュで自転車をぶっ飛ばした。


その甲斐あってギリギリチャイムが鳴るのと同時に学校に着いた。


健三『まにあったぁ~。しかし朝の夢は最悪だったな。あんな夢見ちまったのも元はといえば雄太のせいだ。まったく・・・。』


俺は汗びっしょりになりながら、雄太に対してブツブツ言いながら自分の席に腰を下ろした。


謙三『ギリギリだったね。ちゃんと夜は寝なくちゃ駄目だよ♪』


涼しい顔で余計なお世話な事を言う野郎だ。


健三『昨日は色々あったからな。ちょっと疲れてたんだよ。』


謙三は間髪を入れずにこう聞いてきた。


謙三『安達さんと五十嵐君の事か。』


俺は心臓の鼓動が更に早くなった。なんでこいつこの事知ってるんだ。唯だってこんな昨日の今日に人に言う様な奴じゃない。雄太はこいつの事きらってるし・・・・。


健三『どこまで知ってるんだよ』


謙三は笑いながら


謙三『なーんだ。やっぱそうなんだ笑 健三君は分かりやすいね♪』


朝から俺の事おちょくって楽しいのかコイツは。俺は酷い嫌悪感を覚えた。謙三は悪びれも無く続ける。


謙三『昨日家に帰ってたら五十嵐君と安達さんが一緒に帰ってるとこ見かけてさ♪なんか色々はなしてるようだったけど~。なにかあったのかな?♪』


まただ。なんでコイツは2人が一緒に帰った所を目撃してるんだ。あの時、俺らは放課後部活見学をして、さらに、かなり遅くまで残っていた。それに2人が帰る頃には結構日も沈んでいたからぱっと見あの2人だって普通は分からないんじゃないか。疑惑が疑惑を生む。


俺は直感でこいつ何かを知っていると思った。俺が黙っていると、謙三がニヤニヤしながら、


謙三『別に言いたくないなら言わなくても良いよ♪勝手に推測するから笑』


こいつ。楽しんでやがる。俺はこの日から謙三をそれとなく探るようになった。別に、ほんとにたまたま偶然に見かけただけかもしれない。けど、俺の直感がコイツは怪しいと警報をならしている。


俺はそれとなく教室を見回した。唯が学校に来ていない。あいつが遅刻をするわけが無い。やはり昨日のショックで休みを取ったのか?まぁ無理もない。いきなりそんな風に思ってなかった奴からいきなり告白されるのは衝撃以外なにものでもない。


雄太の席も空いていた。あいつは遅刻の可能性があるが、もしかしたら今日は休みかもしれない。せっかく部活に入ったのに初日からこれか、と思うと溜息をつかざる終えなかった。


雄太は3限の終わりのほうに教室に入ってきた。顔からは生気が抜けている。逆に遅刻してきたのに、先生からは心配される始末。こいつから要領のよさを伝授させてもらいたい。


とりあえず今はそんなことはひとまず置いといて。俺は授業が終わるのと同時に雄太の席に向かって行った。

俺はかける言葉が見つからず、月並みな言葉でごまかした。


健三『元気か?顔色わりぃぞ。』


元気なはずがない。しかし雄太は俺の顔を見ながら、


雄太『ああ・・。なんとか生きてる。』


こいつぁ相当重症だな・・。なんで急にそんな決心をしたのか俺は雄太に問いかけてみた。


健三『なぁ。なんでそんな決断に至ったんだ。訳を話してみろよ。』


そうすると、雄太はポケットに手を突っ込み自分の携帯電話を取り出して俺に見せてきた。



第15章~儚い


俺は雄太にいきなり携帯をつきつけられ、何のことかさっぱりわからなかったが、携帯の画面上に浮かびあがってる2チャンネルという文字は理解した。


健三『2ちゃんねるがどうかしたのか?』


そうすると、雄太は重い口を開いて話だした。


雄太『俺、中学のころから唯の事が好きだった。けど勇気が持てなかった。そんなときここの存在を知ったんだよ。最初はもちろん見てるだけだった。こいつらのアドバイスは的確で相談者の奴はどんどん付き合っていった。俺もこいつらからアドバイス貰ったら唯と付き合えるんじゃないかと思ったんだよ。』


雄太『最初唯や俺の事について書きこんだ時は、ここの掲示板の奴等みんな親身になって考えてくれた。俺もそれが嬉しくてどんどん書きこんだんだ。そしたら今度はみんなが過激な事を求めてくるようになって…。俺も後には退けなくなっちまった。』


雄太はそう途切れそうな声で話した。


俺は雄太の肩をポンと乗せ、


健三『別にお前が2チャンネラーでも構わない。けど、こんなみっともないことだけはすんな。唯の事本当に好きだったんだろ?なら自分で考えて自分で行動を起こさなきゃ駄目だろ。他人にこうやれって言われてそう動いて…。それは自分の意思じゃない。そうだろ雄太。』


雄太は黙って頷いていた。


でも俺はあまり雄太を責めれなかった。あいつが唯の事大好きだったのは俺も痛いほど知っていた。

あとは唯か…。あいつも雄太と同じぐらい落ち込んでるのだろうか。


唯の奴中学ん時みたいにパニック症状が再発してなければ良いのだが…。今日の帰りにでも唯んちに寄って話聞いてやるか。


俺は次の現国の授業に備えて席に戻った。


放課後、俺はとりあえず唯や雄太の事はおいといて音楽室に向かった。


音楽室の扉をあけて、俺はアコースティックギターを探した。しかし、探せど探せど見つからない。


そんなときミッキーが入って来た。片手にギターケースを抱えて。


美樹『前田君無くて慌ててたんじゃない?ちゃんとここにあるわよ♪弦を張り替えておいたわ。』


そういうと俺に渡してくれた。俺は待ちきれない様子でギターケースを開けた。ギターケースは木の甘い香りと新品同様に変身したアコギがはいっていた。


俺は他にもピックやらスコアやらを色々貸して貰った。


美樹『最初は主要なコードを覚える方が良いかもね。難しいコードもあるけど前田君なら問題ないはずよ。』


健三『難しいコードかぁ。』


しかしこの時、大変そうと思う気持ちより、ワクワクという気持ちがの方が全面に出ていたと思う。


健三『ミッキー本当にありがとう。』


多分素直に出た言葉だった。


ミッキーも俺には今まで先生と言われ続けたのでびっくりしていた。


が、満面の笑みで


美樹『頑張ってね♪』


と言ってくれた。この今の時間がずっと続けばどれだけ幸せだろう。この後で唯の家に行って愚痴を聞かされる前にここで現実逃避しておこう。


と、俺は思った。


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第12章~信じる


俺はギターを最初に置いてあったギタースタンドに戻し、椅子に座りながら唯と雄太が帰るまで一休みしていた。


俺は音楽室の椅子に浅く座り、天井を見上げた。音楽室の天上は穴だらけであった。防音効果かなにかかな。


と考えたがめんどくさかったので深くは考えなかった。


そこにミッキーが音楽室に入ってきた。


美樹『あれ?3人一緒に帰ったんじゃなかったの?』


そう言うと俺は、


健三『まぁ色々理由があるんですよ。』


と意味ありげに先生に話した。


ミッキーはニヤニヤしながらふーんと笑っていた。


音楽室に静けさが戻り、ミッキーの顔が急に真面目になった。


美樹『前田君。入ってくれてありがとうね。』


俺は、一瞬ドキっとしながら平静を保ちつつ、


健三『別に先生の為に入ったわけじゃないっす。』


ミッキーは、そう。と言い微笑んでいた。その笑顔に俺は吸い込まれた。そしたら勝手に口が動いていた。


健三『俺って今までなにかをやろうって思う事がなくて、中学では帰宅部でした。人から誘われたりもしたけど、

すぐめんどくさいって思って・・・。正直こんな性格が自分でも嫌でした。俺は人に自慢できるもんなんか一つもない。ろくに自分も紹介する事もできない。だから、高校になったらなにかを始めようと思ってた。けど、きっかけがなくて・・・。そしたら・・・。』


俺は言葉を詰まらす。


ミッキーは首をかしげながら


美樹『そしたら?』


俺は軽く深呼吸した。こんな心臓が暴れまくると酸欠になっちまう。つかなんで俺こんな事先生に話してるんだろう・・・。でも途中で止めるのは歯切れが悪い。


健三『・・・そしたら、先生のギターの音色を聴いたんです。音楽を聴いてあんなにドキドキする事は初めてだった。今でも思い出すだけで心臓が痛いぐらい鳴ってます。』


ミッキーは優しく微笑みながら両手で、俺の手を軽く握った。


美樹『前田君にだってあのぐらいすぐに弾けるようになるわ。こんな長くて凄く綺麗な指もしてる。素質は十分あるわ。後は、どれだけ自分を信じれるか。』


健三『自分を・・・信じる・・・?』


ミッキーはさっきと打って変わって、俺の手を強く握った。


美樹『そう。自分を信じる。言葉にするとひどく簡単に聞こえてしまうけど、これはなかなか出来ないことなの。みんな自分の可能性を否定しがちだからね。でもそんな事はないの。自分を信じて意思を貫き通す事。そうすると必ず結果はついてくるわ。』


美樹『希望を願う事は簡単。お金がほしい、人気者になりたい、才能がほしい。でもね、自分の意思を信じる人が必ず最後に栄光を掴む。意思を貫くことはとても大変だけど前田君ならきっと大丈夫。前田君にはあんな良い友達がいる。ね♪』


俺は聞き入っていた。今までこんなまっすぐ向き合ってくれた大人が居ただろうか。俺はボソっと、ミッキーが聞こえるか聞こえないかの声で、


健三『自分を・・・信じてみます・・・。』


それが聞こえたのかは俺には分からない。ただ分かったことはミッキーが微笑んでいたこと、そして俺の頬に何年ぶりだか分からない何かが流れ落ちた事ぐらいだった。


第13章~鳥肌


辺りはもう真っ暗になっており、俺はミッキーと一緒に帰宅することになった。


俺はさっきまでの熱が冷めて酷く恥ずかしい気持ちになった。


健三(女の前であんな姿晒しちゃって・・・。)


偶然にもミッキーとは帰る方角が一緒だった。


俺は、沈黙はやべぇと思い話をふった。


健三『先生はあの軽音楽部になにか思い入れがあるんですか?』


ミッキーは訳有りげに笑って、


美樹『私実はこの学校の卒業生なの。』


俺は素でびっくりした。まぁうちの学校はつい最近建て直して、昔とガラリと内装が変わって綺麗になったらしいのは知っている。


どおりで初日に教室を間違えたわけだ。当時あった校舎の感覚でいたらそりゃ迷うわ。でも普通気づくと思うが、どんだけ天然なんだこの先生。


美樹『その時所属してたのが軽音楽部なの。あの頃は人数も多くてかなりにぎやかだったわね。それに学園祭だけじゃ物足りなくてライブハウスに行って演奏したときもあったわ。笑』


完全にレベルがちげぇ。あ、そういや前、初めて音楽室で会って放したときギター弾いてたっていってたな。しかもなんかあん時遠い目してたし。せっかくだから聞いてみよっかな。


健三『この前音楽室ではなしてた時 先生遠い目してたけど、なんか関係があるんじゃないすかぁ~笑』


俺はニヤニヤしながらミッキーに尋ねた。


ミッキーは、思い出し笑いをしながら、

美樹『そんな目してないって~笑 してたとしたらかなり恥ずかしい笑』


と笑っていた。


美樹『まぁ、なんも無いって言えば嘘になるかな。』


俺は、あまりに先生の悲しそうな顔を見てびっくりした。


美樹『まぁ、そのうち話す日が来るかもね♪私家こっちだからここでさよならかな。明日遅刻しないように学校に来ること!いいわね♪それじゃ。』


ミッキーはそのまま住宅街に歩いていった。ミッキー、過去になにがあったんだろう。あの顔からするときっと良い事じゃないってのはわかるけど・・・。


ヴヴヴ・・・・ヴヴヴ・・・


健三『ん?メールが来てる。』


俺はメールフォルダを開けてみてみた。登録してないアドレスからだった。俺はおそるおおそるメールを開ける。ミッキーからだった。


美樹【ミッキー事、美樹です♪帰り遅くなって親御さん心配してないかな?そうそう。いい忘れてたことがあるんだけど、ギター練習の為にあのアコギ(アコースティックギターの事ね)貸してあげる☆( 。・ω・。)ノ いきなりエレキからやるよりアコギでしっかり押さえながら練習したほうが、ちゃんと覚えて断然上達が速しね。まぁ指は痛くなると思うけど頑張れ♪まぁ適当にスコアも明日渡すからそれ見ながらね♪それじゃまた明日(●´д`●) 】


まじであのアコースティックギター貸してくれるのか!俺はそう思うと全身に鳥肌が立った。


ミッキーにお礼の返信をして俺はスキップしながら家まで帰った。気分はウキウキだぜ!!


そんな感じで家に着き、玄関で靴を脱いでたら、またメールが来た。先生やけに返信はええなぁ。と思い、メールを開けたら雄太からだった。


雄太【今日俺にきぃつかってくれてさんきゅうな。つうか、俺さ、今日唯に告白したよ。】


そうかそうか・・・・・はい?!!?!?!?!?!?

いやいや。雄太。物には順序ってもんがあるだろ・・・・・・。


俺はさっきまでの嬉しい鳥肌が、戸惑いの鳥肌に変わった。


メールの続きはこう書いてあった。


雄太【唯の返事なんだけど、今はちょっと待ってほしいだとさ。まだそんな高校にもなれてないし、それにまず俺の事をそこまでしらないし。とか言ってた。】


唯お前は正しいよ。


雄太【やっぱ安価メールに頼った俺が馬鹿だったのかなぁ。まぁ詳しくはまた明日話すよ。今日は疲れた!寝る!】


というメールだった。つか、まず安価メールってなんだよ。まぁそれは置いといて、どんだけ生き急いでんだよ。唯も急にこんなこと言われたら戸惑うだろうに。


結成した初日、解散してしまうという危険性が浮上してしまった。俺はほとほと疲れ果て、晩飯を抜いてそのままベッドにへたれこんだ。



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第10章~入部

そんな話をしていたら昼休みもいつのまにか終わっていた。

5、6限も授業があったはずだが完全に夢の国に行っていた。昼飯後の授業はいつも睡魔と共存している。

特に今日の5、6限は古典と歴史。睡魔を格段と進化させる授業だ。

どうにか6限を終えると雄太がニコニコしながら寄ってきた。キモい。

雄太『うし!さぁ行くか!あれ唯は?』

俺は黒板を指しながら

健三『あいつ今日日直だから職員室じゃね?』

そんな話をしている直後、唯が教室に入ってきた。

唯『遅れてごめん!日直だったから職員室行ってた。』

雄太のニヤニヤが止まらない。こいつはすぐ顔に出るから分かりやすい。

雄太『うし!揃った所で早速部活巡りと行きますか♪』

唯は、お~♪とか言って俄然ノリノリである。雄太が、ん~と唸りながら、

雄太『どうせマエケンは体育会系の部活には入らないんだろ?』

核心をついてきやがった。

健三『まぁなぁ。つかうちの学校の文化系って何があるんだ』

雄太は手帳をパラパラ捲りながら

雄太『そうだな、漫画研究会、将棋部、書道部、料理部、英語部、パソコン部、吹奏楽部。あ、あと軽音楽部もあったな。』

俺はふと昨日のギターの音色を思い出した。

雄太『だけど軽音楽部は今年部員0らしいから誰も入らなかったら廃部かな。』

俺はそうかと雄太に言い残した。唯は俺の顔を覗き込むと

唯『っでけんちゃんは何処に入りたいか決まったの?』

俺は腕を組みながら

健三『ん~とりあえず回ってから決めようぜ』

唯と雄太は納得した様子で歩き始めた。

結構呼び込みとか激しくて袖を引っ張られながら色々見て回ったがやっぱりピンとは来なかった。

俺らはいつのまにか俺がこの前足を運んだ音楽室の前に来ていた。

雄太が手帳を捲りながら、

雄太『ここが軽音楽部の活動場所だな。でもやっぱ部員がいないからなんの音もしないな笑 次いこうか?』

雄太がそういいながら体の向きを変えようとしたが俺はその場で直立不動だった。むしろ動けなかったというのが本当だ。

俺は耳を凝らしてみる。前みたいにギターの音色は聞こえない。

俺は恐る恐る教室の中に入って行った。

二人も俺のあとをついて音楽室に入ってきた。

そこは一見普通の音楽室であったが、中央に置かれたアコースティックギターがなにやら哀愁を漂わせていた。

俺は一目見たときに気づいた。

健三(この前先生が弾いていたギターだ。)

俺はなにかにとりつかれた様にそのギターの元へ歩いていった。

雄太が慌てながら、

雄太『かってに触ったらまずいんじゃね?誰も居ないみたいだし次の部活見に行こうぜ。』

と、言っていたが俺はそんな言葉に耳を傾けなかった。

雄太がやれやれというポーズをとっていたと思う。正直俺はこの時の記憶が無い。無いといったら大げさだが、なんかふわふわしている感情に陥っていた。

俺がギターを握り締める。ネックの部分を持ちながら優しくひざの上に乗せ弾いてみた。

一音一音大事に弦を弾いていった。

指で弦の弾きを確認しながらただ音を鳴らしていた。

俺はこの時点でこの木で出来て弦が張られているだけの楽器に虜になっていたのだとおもう。

そうすると、うちの担任のミッキーが入ってきた。

美樹『あら?部活見学?でも残念なんだけどうちの部は今日をもって廃部することになっちゃったの。部員がいないからしょうがないわよね。』

先生の目は酷く落ち込んでいた。俺はギターを握り締めながら。

健三『俺決めたわ』

雄太が首をかしげた。

雄太『へ?』

健三『俺軽音楽部に入るよ。』

雄太は驚きを隠せていない。かなりどもっている。

雄太『え?あ、いや。まじで?誰もいないこんな部活に・・・あ。』

先生の方をチラっとみながら、

雄太『もっと人がいっぱいいるような部活のほうがいいんじゃない?』

雄太にそうなだめられたが俺は頑なに拒否した。

唯が笑いながら、

唯『まぁけんちゃんは一回これっていったら絶対他に目をむけられない奴だもんね。ほんと頑固者なんだから笑 1人で部活するのもなんだから私も軽音楽部に入ってあげる。1人じゃ盛り上がらないでしょ?』

と、言いつつ俺の肩に手を乗せてきた。

雄太もそれを見て、

雄太『あ~もう。じゃあ俺もはいります!2人より3人のほうがいいだろ!!それに乗りかかった船だ!俺も軽音やってみるわ!』

先生は目をウルウルさせながら

美樹『良かった・・・これでこの部活を潰さなくて済む・・・。今から校長にかけあってくるからまっててね!!』

そういうとミッキーは疾風のごとく校長室に走っていった。


第11章~結成

ミッキーは息を切らしながら入部届けの紙をもってきた。

美樹『ふぅ~!おまたせ♪これ入部手続きの紙ね。ここに名前と学年書いてくれるだけでいいから。あ、あと電話番号か携帯のアドレスも書いといてくれると嬉しいな。色々連絡とか取らないといけないしね♪』

ミッキーは俄然やる気たっぷりであった。なんか俺ってノリで入っちゃうとか言っちゃったけど、大丈夫だったのかな・・・。

俺達はミッキーに言われるがまま、書類(といっても1枚の薄っぺらな紙)に全部記入してミッキーに渡した。

美樹『それじゃあ、少し軽音楽部について説明しとくね。』

ミッキーはこの部について説明を始めた。

美樹『この部活は基本的に毎日活動してるのね。まぁ別に強制って訳じゃないけど、なるべく来てくれたらすぐ楽器にも慣れると思うし。とりあえず当面の目標は、11月の学園祭にみんなでステージに上がって演奏できるぐらいまでにはなりましょう!!!』

俺達は( ゚Д゚)って顔で先生の話を聞いていた。いやいやいやいや。まてまてまてまて。まだギターの『ギ』の字も知らない素人がステージに上がれるわけが無い。しかも、今は5月。11月まで6ヶ月という猶予しか与えられない。

0からやってる俺達で間に合うのだろうか。そうすると雄太が慌てて、

雄太『いや、まじっすか?俺楽器なんて触ったことないし、急にそんな事言われても実感わかないっすよ・・・。』

唯も戸惑いを隠せない様子。

ミッキーは笑いながら

『大丈夫!まだ6ヶ月っていう猶予がある!その間にみんなに基本を注入していくから。私を信じて♪それになにか目標がないとやる気でないでしょ?』

雄太『まぁ・・・。確かにそうっすけど・・・。

唯は困った様子で、

唯『あ、それに誰がどの楽器を演奏するかとかも決めないと練習しようがないですよね。それはどうするんですか?』

ミッキーは、ん~と唸りながら、

美樹『そうねぇ。まぁとりあえず演奏するには、ドラム・ギター・ボーカル・ベースが居ないと始まらないわよね。ちょうど私たちは4人いるし、そうねぇ。希望とかある?』

俺はボソっと、

健三『ギター・・・が良いっす。』

唯と雄太は驚きの表情を隠せない様子だった。

雄太『マエケンが率先して何かをやるなんて初めてみたかもしんねぇ笑』

俺も正直びっくりしていた。でも無性にコレだけは誰にも譲りたくなかった。

唯『じゃー私は楽器苦手だからボーカルになろうかなぁ。雄太は何にするの?』

雄太はベースかドラムしか残っていない。凄く悩んだ結果ベースにすることに決めた。

美樹『まぁドラムは音楽センスとスタミナとテクニックが最重要されるバンドの要だから、経験者の私がやるのが無難かもね。』

こうして、素人3人と先生という異例のバンドが今結成された。

ミッキーは明日楽器を自宅から持ってくるらしい。ミッキーって実は金持ちなのか??

美樹『じゃあとりあえず今日はもう遅いし帰りましょうか。明日からビシビシ鍛えて行くから覚悟しなさいよ♪』

俺達は苦笑いでその場を取り繕った。まぁ自分でやるって言った以上男ならやるしかねぇ!と自分を奮起させる。そんな俺を唯は微笑ましく眺めていた様な気がする。勘違いかもしれんが。

俺達は、下駄箱に向かい3人で帰ろうとしたが、俺はわざとらしく、

健三『やべ。俺教室に忘れ物してきた。2人で先帰ってていいから。それじゃまた明日。』

雄太にウィンクをして俺は教室に戻った。俺がウィンクするなんて柄じゃねぇ、と思いつつも今日は機嫌が良かったから気にしない。雄太を無理やり軽音楽部なんか入れてしまったんだから、これぐらいやってあげなきゃ罰があたるってもんだ。

俺は1人音楽室に向かっていた。

部屋の中心にあのアコースティックギターがおいてある。あそこだけ空気が澄んでいるように思えた。俺はそのアコースティックギターを握り締め、ただただ音を鳴らしていた。

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第7章~事情

帰りのHRが終わり俺は教室の掃除をやっていた。

そこに雄太がホウキをもって来た。あいつ掃除当番じゃないのに。

雄太『いやぁ。健三の行動力には本当に感動もんだよ!さっさと掃除終わらして3人で見学しに行こうぜ』

一刻も早く唯と周りたいんだろう。掃除するのは俺の為よりも自分の為みたいだ。

まぁなんにせよ掃除が終わるならそれにこした事はないな。

あらかた掃除が終わった頃にメールが来た。唯からだった。

唯【ごっめん!今日お母さん遅くなるみたいだから先に帰らなきゃ(汗)妹にご飯も作ってあげなきゃだしね。また明日にでも部活周りしよ♪】

俺は雄太にとても言い出し辛かった。まぁでも唯が大変なのは雄太も知ってるはずなので話せば納得するだろう。

唯の家庭は母、唯、妹の3人で暮らしている。唯の親父さんは唯が物心つく前に事故で亡くなってしまっている。

中学の時は唯の母さんの帰りが遅い時は俺んちでご飯を食べたりもしていた。

最近は自分で料理をしたりするらしい。唯の料理は食べたことないけど。

まぁ俺はひとまずこのメールを雄太に見せた。

さすがに落ち込んでいるようだったが雄太もある程度事情を知っていたので、しょうがないかと呟いていた。

結局今日部活見学は中止になった。まぁ俺にとっちゃどっちでも良かったけど。

雄太は魂が抜けた様に先に帰ってしまった。せっかくだから最後まで掃除終わらせてくれって言おうとしたが雄太の情けない背中を見てしまったのでそっとしておいた。

俺はとりあえず掃除を全部終わらして帰りの支度を始めた。

俺は荷物を全部ロッカーに押し込み空のバッグを背負った。

その時どっからともなくギターの音色が聞こえた。

しかも素人が聞いてもかなり巧いと分かるほど。

俺はせっかくだから少し覗いてみることにした。

音のなるほうに足を運んで行った。そこは音楽室。まぁ当たり前か。

部活中で吹奏楽の生徒が弾いてるのかなと思いちょっと顔を出して覗いてみた。

そこにいたのはうちのクラス担任の数学教師ミッキーこと、須藤美樹先生だった。

第8章~ギター

先生は俺の事に気付かず弾いていた。あまりの上手さについつい俺は聞きいってしまった。

曲が終わったみたいでふと我に返る。あまりの上手さに気付いたら拍手をしていた。

先生はビックリした表情で

美樹『 いつからそこにいたの?全然気付かなかった。こんな時間にどうしたの?』

俺は正直に答えた

健三『俺今日掃除当番でついさっき終わったんすよ。んで帰ろうとしたらギターの音が聞こえたんです。あまりに上手かったからちょっと覗こうかなって。』

どうも美人と話すと緊張してしまう。悪い癖だ。

先生はクスクス笑っていた。緊張が伝わったのだろうか。

美樹『そうなんだ♪私、ギターは高校生のころからやっててね。たまに昔を思い出しながらこうやって夢中になって弾いちゃうんだよね』

この時の先生は遠い目をしていた。昔になにかあったのだろうか。

健三『さっき弾いてた曲ですけどあれって誰の曲ですか?』

先生はフフフと笑いながら

美樹『あれは自作の曲よ。昔作曲してた時があってその時作った曲なの。どう良かった?』

正直にビックリした。俺は興奮気味に

健三『かなり良かった!なんかすげぇカッコ良かったし。素人の俺が言ってもあれだけど。』

先生はにっこり笑いながら

美樹『そんなことないよ。私だって素人みたいなもんだし。そうやって言われると凄い嬉しい。ありがと♪』

なんでかしらないけどこの時俺は心臓が破裂しそうなぐらいすげぇドキドキしていた。

健三(こんな正面からありがとうとか言われると照れるな…)

先生がどした?って俺の顔を覗き込んだけど俺は顔を隠しながらなんでも無いですと返した。

美樹『今日は遅いからそろそろ帰りなさい。親御さんも心配しちゃうと思うし。』

俺は素直に頷いて帰路についた。いつもならこんな素直じゃないのに自分で自分が気持ち悪い。

俺は自分の部屋に入りベッドに寝っころがった。

目を閉じるとあの曲が鮮明に蘇る。俺はまたあの曲聞きたいなぁと思いながらゆっくり寝床についた。
第9章~疑惑

いつもの様に6時に起きる。この時間に起きないと遅刻してしまうからだ。

さっさと制服に着替えて飯をかきこみ、俺は親父より先に家を出て学校に向かった。

学校に行く途中偶然にも唯にあった。

健三『唯おはよ』

唯は急に後ろから声をかけられてビックリしてたが俺だと分かると安心した様子だった

そんなにビックリしなくても良いだろと思ったが。まぁいいか。

唯『あ、おはよ。昨日ごめんね。急に断っちゃって』

健三『良いよ。結局部活巡り今日になったから。今日は大丈夫そうなの?』

唯は親指を立てて世界共通のジェスチャーをしながら

唯『オッケー♪昨日カレー作ったからお母さんの帰り遅くても全然よゆー♪』

唯のカレーか。ちょっと試しに食ってみたいと思った。

続けて唯は核心的な質問をぶつけてきた

唯『けんちゃんは大体どの部活に入ろうとか決まってるの?例えば体育会系とか文化系とかさ』

正直今更体育会系に行くだけの実力も体力もない。

健三『体育会系はパスだな』

だろうな、と言う表情を唯にされた。

健三『そういう唯はもう入りたい部活決まったのかよ』

唯は、ん~。と唸った後に

唯『私も体育会系はパスしとこうかな』

もともと唯は中学の時テニス部で運動能力はかなり高い部類に入っていたとおもう。

尚更疑問だった。

健三『テニスは辞めちゃうの?』

俺の質問に唯はいとも簡単に

唯『うん。そんな好きって訳じゃなかったし。それに入ったのもただ誘われただけだしね』

俺は内心あのミニスカが見れないとなると残念だったが、俺はふぅんと言っておいた。

そんな会話をしているといつのまにか学校に着いていた。

俺は自分のロッカーから今日の時間割の教科書を持って来て席に着いた。

うしろの謙三が肩を叩いてくる。

謙三『健三君おはよ』
俺もおはよと返す。

謙三は続けてこんな事を言って来た。

謙三『二人で登校だなんて朝から見せつけるね~』

健三『たまたま学校行くときにあったんだよ』

謙三『まぁ安達さんの家と近いもんね。』

健三『まぁな。』

ん?俺は違和感を感じた。

なんでこいつが俺んちをしってるんだ。こいつにそんな事言った覚えはない。

もしかして唯が言ったのか。唯の奴!勝手に色々はなしやがって。

後で唯に聞こうか迷ったが面倒くさかったので辞めた。

昼休み。俺は雄太と飯を食っていた。

雄太が俺に心配そうに訪ねてきた。

雄太『なぁ~。今日こそ3人で回れるかなぁ。』

俺はイタズラっぽく

健三『唯と、だろ?』
と言うと、雄太は

雄太『まぁそういうなって今度飯おごるからさ♪』

と俺の肩をポンポンしている。

これでタダ飯ゲット。

俺は雄太に謙三について聞いてみた。

健三『なぁ、雄太。謙三についてどうおもう?先に言っとくけど俺のことじゃないからな』

雄太はん~と唸りながら、

雄太『正直いけすかねぇ野郎だけど、あいつ敵に回したら女供が黙っちゃいねぇだろうな。』

あいつは既にこのクラスの女を味方につけたというのか。末恐ろしい。

雄太がポケットからメモ帳を広げ俺に小声で話しかけてきた。

雄太『でもよ、あいつ中学の時は全然目立たないような奴だったらしいぜ。』

こいつはこういうネタをどっから仕入れているんだろう。そっちの方が興味が沸く。

雄太『まぁ何処にでもいる高校デビューって奴だな。』

健三『まぁそれだけなら別に良いんだけど…。』

健三『しかし、雄太。良くそこまで調べたな。』

雄太は得意気に

雄太『俺の予想ではあいつ唯の事狙ってそうだからな。俺にとって恋敵だ。まず敵の事を知らんとな。』

こいつだけは敵に回すまいと心に誓った。
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