第7章~事情

帰りのHRが終わり俺は教室の掃除をやっていた。

そこに雄太がホウキをもって来た。あいつ掃除当番じゃないのに。

雄太『いやぁ。健三の行動力には本当に感動もんだよ!さっさと掃除終わらして3人で見学しに行こうぜ』

一刻も早く唯と周りたいんだろう。掃除するのは俺の為よりも自分の為みたいだ。

まぁなんにせよ掃除が終わるならそれにこした事はないな。

あらかた掃除が終わった頃にメールが来た。唯からだった。

唯【ごっめん!今日お母さん遅くなるみたいだから先に帰らなきゃ(汗)妹にご飯も作ってあげなきゃだしね。また明日にでも部活周りしよ♪】

俺は雄太にとても言い出し辛かった。まぁでも唯が大変なのは雄太も知ってるはずなので話せば納得するだろう。

唯の家庭は母、唯、妹の3人で暮らしている。唯の親父さんは唯が物心つく前に事故で亡くなってしまっている。

中学の時は唯の母さんの帰りが遅い時は俺んちでご飯を食べたりもしていた。

最近は自分で料理をしたりするらしい。唯の料理は食べたことないけど。

まぁ俺はひとまずこのメールを雄太に見せた。

さすがに落ち込んでいるようだったが雄太もある程度事情を知っていたので、しょうがないかと呟いていた。

結局今日部活見学は中止になった。まぁ俺にとっちゃどっちでも良かったけど。

雄太は魂が抜けた様に先に帰ってしまった。せっかくだから最後まで掃除終わらせてくれって言おうとしたが雄太の情けない背中を見てしまったのでそっとしておいた。

俺はとりあえず掃除を全部終わらして帰りの支度を始めた。

俺は荷物を全部ロッカーに押し込み空のバッグを背負った。

その時どっからともなくギターの音色が聞こえた。

しかも素人が聞いてもかなり巧いと分かるほど。

俺はせっかくだから少し覗いてみることにした。

音のなるほうに足を運んで行った。そこは音楽室。まぁ当たり前か。

部活中で吹奏楽の生徒が弾いてるのかなと思いちょっと顔を出して覗いてみた。

そこにいたのはうちのクラス担任の数学教師ミッキーこと、須藤美樹先生だった。

第8章~ギター

先生は俺の事に気付かず弾いていた。あまりの上手さについつい俺は聞きいってしまった。

曲が終わったみたいでふと我に返る。あまりの上手さに気付いたら拍手をしていた。

先生はビックリした表情で

美樹『 いつからそこにいたの?全然気付かなかった。こんな時間にどうしたの?』

俺は正直に答えた

健三『俺今日掃除当番でついさっき終わったんすよ。んで帰ろうとしたらギターの音が聞こえたんです。あまりに上手かったからちょっと覗こうかなって。』

どうも美人と話すと緊張してしまう。悪い癖だ。

先生はクスクス笑っていた。緊張が伝わったのだろうか。

美樹『そうなんだ♪私、ギターは高校生のころからやっててね。たまに昔を思い出しながらこうやって夢中になって弾いちゃうんだよね』

この時の先生は遠い目をしていた。昔になにかあったのだろうか。

健三『さっき弾いてた曲ですけどあれって誰の曲ですか?』

先生はフフフと笑いながら

美樹『あれは自作の曲よ。昔作曲してた時があってその時作った曲なの。どう良かった?』

正直にビックリした。俺は興奮気味に

健三『かなり良かった!なんかすげぇカッコ良かったし。素人の俺が言ってもあれだけど。』

先生はにっこり笑いながら

美樹『そんなことないよ。私だって素人みたいなもんだし。そうやって言われると凄い嬉しい。ありがと♪』

なんでかしらないけどこの時俺は心臓が破裂しそうなぐらいすげぇドキドキしていた。

健三(こんな正面からありがとうとか言われると照れるな…)

先生がどした?って俺の顔を覗き込んだけど俺は顔を隠しながらなんでも無いですと返した。

美樹『今日は遅いからそろそろ帰りなさい。親御さんも心配しちゃうと思うし。』

俺は素直に頷いて帰路についた。いつもならこんな素直じゃないのに自分で自分が気持ち悪い。

俺は自分の部屋に入りベッドに寝っころがった。

目を閉じるとあの曲が鮮明に蘇る。俺はまたあの曲聞きたいなぁと思いながらゆっくり寝床についた。
第9章~疑惑

いつもの様に6時に起きる。この時間に起きないと遅刻してしまうからだ。

さっさと制服に着替えて飯をかきこみ、俺は親父より先に家を出て学校に向かった。

学校に行く途中偶然にも唯にあった。

健三『唯おはよ』

唯は急に後ろから声をかけられてビックリしてたが俺だと分かると安心した様子だった

そんなにビックリしなくても良いだろと思ったが。まぁいいか。

唯『あ、おはよ。昨日ごめんね。急に断っちゃって』

健三『良いよ。結局部活巡り今日になったから。今日は大丈夫そうなの?』

唯は親指を立てて世界共通のジェスチャーをしながら

唯『オッケー♪昨日カレー作ったからお母さんの帰り遅くても全然よゆー♪』

唯のカレーか。ちょっと試しに食ってみたいと思った。

続けて唯は核心的な質問をぶつけてきた

唯『けんちゃんは大体どの部活に入ろうとか決まってるの?例えば体育会系とか文化系とかさ』

正直今更体育会系に行くだけの実力も体力もない。

健三『体育会系はパスだな』

だろうな、と言う表情を唯にされた。

健三『そういう唯はもう入りたい部活決まったのかよ』

唯は、ん~。と唸った後に

唯『私も体育会系はパスしとこうかな』

もともと唯は中学の時テニス部で運動能力はかなり高い部類に入っていたとおもう。

尚更疑問だった。

健三『テニスは辞めちゃうの?』

俺の質問に唯はいとも簡単に

唯『うん。そんな好きって訳じゃなかったし。それに入ったのもただ誘われただけだしね』

俺は内心あのミニスカが見れないとなると残念だったが、俺はふぅんと言っておいた。

そんな会話をしているといつのまにか学校に着いていた。

俺は自分のロッカーから今日の時間割の教科書を持って来て席に着いた。

うしろの謙三が肩を叩いてくる。

謙三『健三君おはよ』
俺もおはよと返す。

謙三は続けてこんな事を言って来た。

謙三『二人で登校だなんて朝から見せつけるね~』

健三『たまたま学校行くときにあったんだよ』

謙三『まぁ安達さんの家と近いもんね。』

健三『まぁな。』

ん?俺は違和感を感じた。

なんでこいつが俺んちをしってるんだ。こいつにそんな事言った覚えはない。

もしかして唯が言ったのか。唯の奴!勝手に色々はなしやがって。

後で唯に聞こうか迷ったが面倒くさかったので辞めた。

昼休み。俺は雄太と飯を食っていた。

雄太が俺に心配そうに訪ねてきた。

雄太『なぁ~。今日こそ3人で回れるかなぁ。』

俺はイタズラっぽく

健三『唯と、だろ?』
と言うと、雄太は

雄太『まぁそういうなって今度飯おごるからさ♪』

と俺の肩をポンポンしている。

これでタダ飯ゲット。

俺は雄太に謙三について聞いてみた。

健三『なぁ、雄太。謙三についてどうおもう?先に言っとくけど俺のことじゃないからな』

雄太はん~と唸りながら、

雄太『正直いけすかねぇ野郎だけど、あいつ敵に回したら女供が黙っちゃいねぇだろうな。』

あいつは既にこのクラスの女を味方につけたというのか。末恐ろしい。

雄太がポケットからメモ帳を広げ俺に小声で話しかけてきた。

雄太『でもよ、あいつ中学の時は全然目立たないような奴だったらしいぜ。』

こいつはこういうネタをどっから仕入れているんだろう。そっちの方が興味が沸く。

雄太『まぁ何処にでもいる高校デビューって奴だな。』

健三『まぁそれだけなら別に良いんだけど…。』

健三『しかし、雄太。良くそこまで調べたな。』

雄太は得意気に

雄太『俺の予想ではあいつ唯の事狙ってそうだからな。俺にとって恋敵だ。まず敵の事を知らんとな。』

こいつだけは敵に回すまいと心に誓った。
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