第12章~信じる


俺はギターを最初に置いてあったギタースタンドに戻し、椅子に座りながら唯と雄太が帰るまで一休みしていた。


俺は音楽室の椅子に浅く座り、天井を見上げた。音楽室の天上は穴だらけであった。防音効果かなにかかな。


と考えたがめんどくさかったので深くは考えなかった。


そこにミッキーが音楽室に入ってきた。


美樹『あれ?3人一緒に帰ったんじゃなかったの?』


そう言うと俺は、


健三『まぁ色々理由があるんですよ。』


と意味ありげに先生に話した。


ミッキーはニヤニヤしながらふーんと笑っていた。


音楽室に静けさが戻り、ミッキーの顔が急に真面目になった。


美樹『前田君。入ってくれてありがとうね。』


俺は、一瞬ドキっとしながら平静を保ちつつ、


健三『別に先生の為に入ったわけじゃないっす。』


ミッキーは、そう。と言い微笑んでいた。その笑顔に俺は吸い込まれた。そしたら勝手に口が動いていた。


健三『俺って今までなにかをやろうって思う事がなくて、中学では帰宅部でした。人から誘われたりもしたけど、

すぐめんどくさいって思って・・・。正直こんな性格が自分でも嫌でした。俺は人に自慢できるもんなんか一つもない。ろくに自分も紹介する事もできない。だから、高校になったらなにかを始めようと思ってた。けど、きっかけがなくて・・・。そしたら・・・。』


俺は言葉を詰まらす。


ミッキーは首をかしげながら


美樹『そしたら?』


俺は軽く深呼吸した。こんな心臓が暴れまくると酸欠になっちまう。つかなんで俺こんな事先生に話してるんだろう・・・。でも途中で止めるのは歯切れが悪い。


健三『・・・そしたら、先生のギターの音色を聴いたんです。音楽を聴いてあんなにドキドキする事は初めてだった。今でも思い出すだけで心臓が痛いぐらい鳴ってます。』


ミッキーは優しく微笑みながら両手で、俺の手を軽く握った。


美樹『前田君にだってあのぐらいすぐに弾けるようになるわ。こんな長くて凄く綺麗な指もしてる。素質は十分あるわ。後は、どれだけ自分を信じれるか。』


健三『自分を・・・信じる・・・?』


ミッキーはさっきと打って変わって、俺の手を強く握った。


美樹『そう。自分を信じる。言葉にするとひどく簡単に聞こえてしまうけど、これはなかなか出来ないことなの。みんな自分の可能性を否定しがちだからね。でもそんな事はないの。自分を信じて意思を貫き通す事。そうすると必ず結果はついてくるわ。』


美樹『希望を願う事は簡単。お金がほしい、人気者になりたい、才能がほしい。でもね、自分の意思を信じる人が必ず最後に栄光を掴む。意思を貫くことはとても大変だけど前田君ならきっと大丈夫。前田君にはあんな良い友達がいる。ね♪』


俺は聞き入っていた。今までこんなまっすぐ向き合ってくれた大人が居ただろうか。俺はボソっと、ミッキーが聞こえるか聞こえないかの声で、


健三『自分を・・・信じてみます・・・。』


それが聞こえたのかは俺には分からない。ただ分かったことはミッキーが微笑んでいたこと、そして俺の頬に何年ぶりだか分からない何かが流れ落ちた事ぐらいだった。


第13章~鳥肌


辺りはもう真っ暗になっており、俺はミッキーと一緒に帰宅することになった。


俺はさっきまでの熱が冷めて酷く恥ずかしい気持ちになった。


健三(女の前であんな姿晒しちゃって・・・。)


偶然にもミッキーとは帰る方角が一緒だった。


俺は、沈黙はやべぇと思い話をふった。


健三『先生はあの軽音楽部になにか思い入れがあるんですか?』


ミッキーは訳有りげに笑って、


美樹『私実はこの学校の卒業生なの。』


俺は素でびっくりした。まぁうちの学校はつい最近建て直して、昔とガラリと内装が変わって綺麗になったらしいのは知っている。


どおりで初日に教室を間違えたわけだ。当時あった校舎の感覚でいたらそりゃ迷うわ。でも普通気づくと思うが、どんだけ天然なんだこの先生。


美樹『その時所属してたのが軽音楽部なの。あの頃は人数も多くてかなりにぎやかだったわね。それに学園祭だけじゃ物足りなくてライブハウスに行って演奏したときもあったわ。笑』


完全にレベルがちげぇ。あ、そういや前、初めて音楽室で会って放したときギター弾いてたっていってたな。しかもなんかあん時遠い目してたし。せっかくだから聞いてみよっかな。


健三『この前音楽室ではなしてた時 先生遠い目してたけど、なんか関係があるんじゃないすかぁ~笑』


俺はニヤニヤしながらミッキーに尋ねた。


ミッキーは、思い出し笑いをしながら、

美樹『そんな目してないって~笑 してたとしたらかなり恥ずかしい笑』


と笑っていた。


美樹『まぁ、なんも無いって言えば嘘になるかな。』


俺は、あまりに先生の悲しそうな顔を見てびっくりした。


美樹『まぁ、そのうち話す日が来るかもね♪私家こっちだからここでさよならかな。明日遅刻しないように学校に来ること!いいわね♪それじゃ。』


ミッキーはそのまま住宅街に歩いていった。ミッキー、過去になにがあったんだろう。あの顔からするときっと良い事じゃないってのはわかるけど・・・。


ヴヴヴ・・・・ヴヴヴ・・・


健三『ん?メールが来てる。』


俺はメールフォルダを開けてみてみた。登録してないアドレスからだった。俺はおそるおおそるメールを開ける。ミッキーからだった。


美樹【ミッキー事、美樹です♪帰り遅くなって親御さん心配してないかな?そうそう。いい忘れてたことがあるんだけど、ギター練習の為にあのアコギ(アコースティックギターの事ね)貸してあげる☆( 。・ω・。)ノ いきなりエレキからやるよりアコギでしっかり押さえながら練習したほうが、ちゃんと覚えて断然上達が速しね。まぁ指は痛くなると思うけど頑張れ♪まぁ適当にスコアも明日渡すからそれ見ながらね♪それじゃまた明日(●´д`●) 】


まじであのアコースティックギター貸してくれるのか!俺はそう思うと全身に鳥肌が立った。


ミッキーにお礼の返信をして俺はスキップしながら家まで帰った。気分はウキウキだぜ!!


そんな感じで家に着き、玄関で靴を脱いでたら、またメールが来た。先生やけに返信はええなぁ。と思い、メールを開けたら雄太からだった。


雄太【今日俺にきぃつかってくれてさんきゅうな。つうか、俺さ、今日唯に告白したよ。】


そうかそうか・・・・・はい?!!?!?!?!?!?

いやいや。雄太。物には順序ってもんがあるだろ・・・・・・。


俺はさっきまでの嬉しい鳥肌が、戸惑いの鳥肌に変わった。


メールの続きはこう書いてあった。


雄太【唯の返事なんだけど、今はちょっと待ってほしいだとさ。まだそんな高校にもなれてないし、それにまず俺の事をそこまでしらないし。とか言ってた。】


唯お前は正しいよ。


雄太【やっぱ安価メールに頼った俺が馬鹿だったのかなぁ。まぁ詳しくはまた明日話すよ。今日は疲れた!寝る!】


というメールだった。つか、まず安価メールってなんだよ。まぁそれは置いといて、どんだけ生き急いでんだよ。唯も急にこんなこと言われたら戸惑うだろうに。


結成した初日、解散してしまうという危険性が浮上してしまった。俺はほとほと疲れ果て、晩飯を抜いてそのままベッドにへたれこんだ。



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