第14章~直感


向こうの方で俺の事を待ってる奴がいる。・・・・唯だ。俺はおおきく手を振りながら唯を呼んだ。


健三『おーい唯~。』


唯は酷く冷たい目で俺の目を睨んだ。


唯『私、雄太君と付き合う事にしたの。サヨナラ。もう気安く私に話しかけないでね。』


横から雄太が出てきて俺の事を見下す。


雄太『そういう事だ。あばよ。マエケン』


健三『ふ・・・ふざけんなああああああ!!!!!!!!!!!!』








俺は頭を小突かれ、布団を引き剥がされた。そこには鬼の形相の母親がたっていた。


母『ふざけんじゃないのはあんたの方よ!!今何時だと思ってるの!!さっさと学校行かないと遅刻するわよ!!』


俺は寝ぼけながら目覚まし時計を手に取る。


健三『げ!!7時?!』


1時間の遅刻である。俺は慌てて制服に着替え、速攻で飛び出した。


俺は猛ダッシュで自転車をぶっ飛ばした。


その甲斐あってギリギリチャイムが鳴るのと同時に学校に着いた。


健三『まにあったぁ~。しかし朝の夢は最悪だったな。あんな夢見ちまったのも元はといえば雄太のせいだ。まったく・・・。』


俺は汗びっしょりになりながら、雄太に対してブツブツ言いながら自分の席に腰を下ろした。


謙三『ギリギリだったね。ちゃんと夜は寝なくちゃ駄目だよ♪』


涼しい顔で余計なお世話な事を言う野郎だ。


健三『昨日は色々あったからな。ちょっと疲れてたんだよ。』


謙三は間髪を入れずにこう聞いてきた。


謙三『安達さんと五十嵐君の事か。』


俺は心臓の鼓動が更に早くなった。なんでこいつこの事知ってるんだ。唯だってこんな昨日の今日に人に言う様な奴じゃない。雄太はこいつの事きらってるし・・・・。


健三『どこまで知ってるんだよ』


謙三は笑いながら


謙三『なーんだ。やっぱそうなんだ笑 健三君は分かりやすいね♪』


朝から俺の事おちょくって楽しいのかコイツは。俺は酷い嫌悪感を覚えた。謙三は悪びれも無く続ける。


謙三『昨日家に帰ってたら五十嵐君と安達さんが一緒に帰ってるとこ見かけてさ♪なんか色々はなしてるようだったけど~。なにかあったのかな?♪』


まただ。なんでコイツは2人が一緒に帰った所を目撃してるんだ。あの時、俺らは放課後部活見学をして、さらに、かなり遅くまで残っていた。それに2人が帰る頃には結構日も沈んでいたからぱっと見あの2人だって普通は分からないんじゃないか。疑惑が疑惑を生む。


俺は直感でこいつ何かを知っていると思った。俺が黙っていると、謙三がニヤニヤしながら、


謙三『別に言いたくないなら言わなくても良いよ♪勝手に推測するから笑』


こいつ。楽しんでやがる。俺はこの日から謙三をそれとなく探るようになった。別に、ほんとにたまたま偶然に見かけただけかもしれない。けど、俺の直感がコイツは怪しいと警報をならしている。


俺はそれとなく教室を見回した。唯が学校に来ていない。あいつが遅刻をするわけが無い。やはり昨日のショックで休みを取ったのか?まぁ無理もない。いきなりそんな風に思ってなかった奴からいきなり告白されるのは衝撃以外なにものでもない。


雄太の席も空いていた。あいつは遅刻の可能性があるが、もしかしたら今日は休みかもしれない。せっかく部活に入ったのに初日からこれか、と思うと溜息をつかざる終えなかった。


雄太は3限の終わりのほうに教室に入ってきた。顔からは生気が抜けている。逆に遅刻してきたのに、先生からは心配される始末。こいつから要領のよさを伝授させてもらいたい。


とりあえず今はそんなことはひとまず置いといて。俺は授業が終わるのと同時に雄太の席に向かって行った。

俺はかける言葉が見つからず、月並みな言葉でごまかした。


健三『元気か?顔色わりぃぞ。』


元気なはずがない。しかし雄太は俺の顔を見ながら、


雄太『ああ・・。なんとか生きてる。』


こいつぁ相当重症だな・・。なんで急にそんな決心をしたのか俺は雄太に問いかけてみた。


健三『なぁ。なんでそんな決断に至ったんだ。訳を話してみろよ。』


そうすると、雄太はポケットに手を突っ込み自分の携帯電話を取り出して俺に見せてきた。



第15章~儚い


俺は雄太にいきなり携帯をつきつけられ、何のことかさっぱりわからなかったが、携帯の画面上に浮かびあがってる2チャンネルという文字は理解した。


健三『2ちゃんねるがどうかしたのか?』


そうすると、雄太は重い口を開いて話だした。


雄太『俺、中学のころから唯の事が好きだった。けど勇気が持てなかった。そんなときここの存在を知ったんだよ。最初はもちろん見てるだけだった。こいつらのアドバイスは的確で相談者の奴はどんどん付き合っていった。俺もこいつらからアドバイス貰ったら唯と付き合えるんじゃないかと思ったんだよ。』


雄太『最初唯や俺の事について書きこんだ時は、ここの掲示板の奴等みんな親身になって考えてくれた。俺もそれが嬉しくてどんどん書きこんだんだ。そしたら今度はみんなが過激な事を求めてくるようになって…。俺も後には退けなくなっちまった。』


雄太はそう途切れそうな声で話した。


俺は雄太の肩をポンと乗せ、


健三『別にお前が2チャンネラーでも構わない。けど、こんなみっともないことだけはすんな。唯の事本当に好きだったんだろ?なら自分で考えて自分で行動を起こさなきゃ駄目だろ。他人にこうやれって言われてそう動いて…。それは自分の意思じゃない。そうだろ雄太。』


雄太は黙って頷いていた。


でも俺はあまり雄太を責めれなかった。あいつが唯の事大好きだったのは俺も痛いほど知っていた。

あとは唯か…。あいつも雄太と同じぐらい落ち込んでるのだろうか。


唯の奴中学ん時みたいにパニック症状が再発してなければ良いのだが…。今日の帰りにでも唯んちに寄って話聞いてやるか。


俺は次の現国の授業に備えて席に戻った。


放課後、俺はとりあえず唯や雄太の事はおいといて音楽室に向かった。


音楽室の扉をあけて、俺はアコースティックギターを探した。しかし、探せど探せど見つからない。


そんなときミッキーが入って来た。片手にギターケースを抱えて。


美樹『前田君無くて慌ててたんじゃない?ちゃんとここにあるわよ♪弦を張り替えておいたわ。』


そういうと俺に渡してくれた。俺は待ちきれない様子でギターケースを開けた。ギターケースは木の甘い香りと新品同様に変身したアコギがはいっていた。


俺は他にもピックやらスコアやらを色々貸して貰った。


美樹『最初は主要なコードを覚える方が良いかもね。難しいコードもあるけど前田君なら問題ないはずよ。』


健三『難しいコードかぁ。』


しかしこの時、大変そうと思う気持ちより、ワクワクという気持ちがの方が全面に出ていたと思う。


健三『ミッキー本当にありがとう。』


多分素直に出た言葉だった。


ミッキーも俺には今まで先生と言われ続けたのでびっくりしていた。


が、満面の笑みで


美樹『頑張ってね♪』


と言ってくれた。この今の時間がずっと続けばどれだけ幸せだろう。この後で唯の家に行って愚痴を聞かされる前にここで現実逃避しておこう。


と、俺は思った。


-----------------------------------------------------------------


第16章&第17章へはこちらからどうぞ



-----------------------------------------------------------------