第28章~動揺~
唯『あの曲とこの歌詞がぴったり合うんじゃないかなって。だから書かせて下さいって言ってみたの。』
健三『ああ。なるほど。だから結構強気で言ってたんだ。』
唯は満面の笑みを浮かべながら照れている。
唯『これをあの曲に合わせて書き直してまた改良しようかなぁって♪そしたらけんちゃん見てくれる?』
そのぐらいなら俺にもできそうだ。
健三『ああ。構わないぜ。俺なんかで良ければな。』
唯『じゃーがんばって書いちゃおうかな♪』
唯が嬉しそうにスキップしていた。久しぶりに生スキップ見た気がする。俺は他にも色々詩が書いてあると思って次のページを開こうとしたとき、
唯『ああああああああああああああ!!!!』
雷の如く俺の手にあった手帳を奪っていった。
健三『そんな見られたらまずいもんでもあんのか~?』
唯はほっぺをプーっと膨らませながら、
唯『そんなことないもん!でもちょっと見られたら恥ずかしいのがあるだけだもん』
すっげぇーきになる・・・。
健三『なぁみs』
唯『駄目』
健三『返事はやすぎだって笑』
唯『こればっかりは駄目!』
健三『ん~分かったよ。もうみねぇよ。だからそんな怖い顔すんなって。』
唯はその一言で緊張を解いた。
唯『とにかく明日はカラオケ思う存分楽しもうね!』
そう唯が言うと小走りで先に家の中に入っていってしまった。
健三(一体あの次のページには何が書かれてたんだろう・・・。気になるけど唯があそこまで嫌がってるのに無理やりみるのも悪いしなぁ。まさか俺の悪口?!なわけないか。)
俺は一人突っ込みを終え、明日に備えて早めに寝ることにした。
29章~一人息子~
俺はいつもより早く目が覚めてしまった。休みの日に限っていつもこんなんである。習慣とは怖いもんだ。
そんな愚痴っぽくなりつつもカーテンを開け部屋に光を差し入れる。
健三『うっわ…まぶし…。今日も暑くなりそうだな~。』
俺は誰にともなく光の指す方に話しかける。
少しゆっくりしながら居間の方に向かう。案の定、親はイビキをかきながらまだ寝ていた。
俺は二人を起こさない様に朝飯の準備を初める。
作っている途中で味噌汁の匂いにつられたのか、アクビをしながらお袋が起きてきた。
お袋『ふぁ~ぁ。あら、もう起きてたの?』
健三『あぁまぁね。そうそう、今日昼ぐらいにカラオケ行ってくるから。』
お袋『唯ちゃんと?』
健三『唯だけじゃなくて雄太もいるよ。』
お袋は俺の事を見ながら、
お袋『ほんとにあんた唯ちゃん好きねぇ。付き合ってるの?ねぇ。』
健三『なわけないじゃん。』
何を言い出すかと思ったら…。俺はあっさり否定する。朝っぱらからこのノリは正直しんどい。
お袋は一言、
お袋『そう。』
と言いながら、寝室に戻って言った。
お袋は思い出したように台所に戻ってきて俺に、
お袋『あ、ご飯出来たら呼んでね。』
と言い残しまた寝室に戻ってった。まったく気楽なお袋なもんだ。
まぁこんな母親だが俺にとっては唯一無二の存在なのもまた事実。
あまり詳しくは聞いてないけど、元々身体が悪かったお袋は俺を産んだ後に卵巣に腫瘍が出来てしまって全部摘出してしまったらしい。
お袋本人はなんも俺に言って無いがきっと辛かったと思う。
これから後にも先にもお袋の息子は生涯俺だけだと思うと親孝行してやらなきゃなぁなんて考えてしまう。
まぁ親にはいくら孝行しても終わりがないしな。
健三『朝っぱらから変な事考えちまったなぁ。』
俺はそうぼやきつつ、味噌汁の味見をする。
ん、我ながらうまい。
健三『お~い。朝ご飯出来たよ。』
俺は両親を起こしに寝室へ向かった。
家族団欒で飯を食う。それは何処の家庭でも当たり前だとつい最近まで思っていたが唯の事を思い出した。
健三(あいつは朝どんな気分でご飯食べてるんだろうか。)
俺はさっさと朝飯を平らげ自分の部屋に行こうとしたとき、親父が俺にこういった。